後進の育成にも注力!仲間と躍進する造園職人
いまむら造園株式会社 代表取締役 今村あふる
プロフィール 神奈川県出身。グラフィックデザイナーを目指し神奈川の有名高校のデザイン科に進学。卒業後は照明器具の会社で照明コーディネーターとなる。体調を崩したことを機に電気工事の職人に転身するも、再びデザイナーになるため有名フラワーショップに就職し空間デザインを学ぶ。石材の修復工事を手がける会社に転職を経て造園職人の道へ。これらの経験を活かすべく、2009年にいまむら造園株式会社を創業した。
グラフィックデザイナーを目指すも挫折を経験。照明デザイナー、電気工事士などを経て造園職人に転身しやりがいを見つけ、26年のキャリアを積んできたのが横浜市のいまむら造園株式会社・今村あふる代表取締役だ。技術と利益のバランス、顧客とのコミュニケーションなど、造園業に欠かせないノウハウを伝え若手を伸ばす今村社長。事業の詳細を探りながら、元ボクシング世界王者の八重樫東氏と後進の育成について大いに語り合った。
◆挫折を経験し電気工事士から造園職人に転身
八重樫 横浜市神奈川区のいまむら造園株式会社さんにお邪魔しています。さっそく、今村社長が造園職人の道を選び、独立するまでの歩みを教えてく下さい。
今村 もともと私は、グラフィックデザイナーを目指していたんですよ。そこで神奈川県内の有名高校のデザイン科に進学し、課題が終わるまで帰宅させてもらえないほど厳しい環境で勉強しました。ただ、成績は悪くなかったものの周囲が天才ばかりで自信をなくしてしまったんです。それで別の進路を模索して、卒業後は照明器具の会社で照明コーディネーターになりました。
八重樫 なるほど。グラフィックではない、別のデザイン系のお仕事を選ばれたんですね。
今村 ええ、ところがその会社では営業ばかりさせられるなど、ブラックな社風のせいで体調を崩してしまいまして。その後、知り合いに誘われて電気工事の職人に転身し、第二種電気工事士の資格も取りました。それでもデザイナーになる夢をあきらめきれず、3年後には「無給でいいから働かせてください」と押しかけ、東京都内の有名フラワーショップに就職して併設の学校で空間デザインを勉強し始めたんです。ただ、生活は一気に苦しくなりました。
八重樫 仕事が無給で学校にも通うとなると、生活はなかなか難しいですよね・・・。
今村 しかも、当時は結婚を考えていた女性がいたんです。結局、私は安定した職を求めて石材の修復工事を手がける会社に転職したのですが、そこもかなりのブラックでして。さらに、彼女には「夢を追いかけているあなたが好きだった」と言われ、振られてしまいました(笑)。このときすでに私は24歳です。電気工事の仕事にやりがいを感じていたこともあり、これまでの経験を活かせる仕事を探して造園職人に転じたんです。
八重樫 なるほど。人生の転機ともいえる出来事を乗り越えて、造園業界に飛び込まれたんですね。今村社長は2023年現在50歳とお聞きしています。造園業界ですでに26年のキャリアをお持ちの大ベテランなんですね!
◆質の高い技術と得る利益のバランスを重視
今村 造園職人になってからは、10年の間で6社を渡り歩きました。ただ、私は自分が納得するまで仕事をしないと気が済まない性格で、周囲とぶつかることも多かったんです。「もっと裁量を広げて私のやり方を認めてくれる仲間と一緒に仕事をしよう」。そう決意し、2007年に独立し、のちに弊社を立ち上げた次第です。独立後は、自分の考えで仕事を進められる環境は本当に楽しいと実感しました。度々転職したことは若気の至りでとても自慢できるようなことではありませんが、今となってはそれも経験で、いろいろな物事に対応できる力が備わったと思います。
八重樫 今村社長ならではの仕事の進め方とは、どのようなものなのか気になりますね。
今村 デザインや花を学んだおかげで良いものをつくる意識があります。電気工事の経験があるからか、他の職人と作業が重なる段取りを整えてスムーズに仕事をする考え方が役に立ちます。造園でも良いものをつくることと利益を出すことを考えると、段取りは大事です。ですから私は質の高い技術と得られる利益のバランスを重視し、スタッフにも一介の職人で終わることのないよう、効率かつ質の良い技術、あとは植木は生物なので植木の先を見て生かす技術を伝えながら日々の仕事に取り組んでいます。
八重樫 主に、どのような現場を手がけていらっしゃるのでしょう。
今村 マンションや工場の植栽管理から、ご家庭の庭木のお手入れまでさまざまな仕事をしているほか、メインは公共工事である公園や街路樹など緑地の管理です。これまでは下請け仕事ばかりでしたが、2021年の社屋移転を機に、自ら横浜市の入札に参加して元請けになる現場を増やしているところなんですよ。おかげさまで「いまむら造園にやってほしい」とおっしゃってくださるお客様も多く、弊社は確実に次のステージに上がっていると感じています。
八重樫 その強さの秘密はどこにあるのか、あらためてお聞かせいただけますか。
今村 弊社には、20代の若者から60代のベテランまで幅広い年代の職人が勤務しています。仲間の協力会社の職人さんにも協力いただき、若手を育成しながら小規模な会社ならではの家族のようなのチームワークで気持ちよく汗を流せる団結力があると思っています。また、まだ造園技術者として日が浅い者でも技術者のサポートを出来る作業があり、全員で周囲への気遣いと丁寧な仕事をモットーに一体感をもって作業しているんですよ。
八重樫 実は、私も経営するジムで後進の育成に挑戦しているところです。今村社長と同じ立場ですが、若い人を育てるにはいろいろな工夫が必要ですよね。
◆造園業で食べる技術をトータルで教える!
八重樫 今の若い選手に、ただ「練習しろ」と尻を叩く昔のやり方は通用しないんです。指導者も体を動かして、「一緒に強くなるんだ」という目線を持たなければなりません。
今村 八重樫さんのおっしゃるとおりだと思います。私も現場ではスタッフと同じ立場で仕事をして、「まだまだお前たちには負けない」という姿勢を見せるよう意識しています。ただ、事務の仕事も多くて最近は現場に出られる日が減っているんですよ。すると若手から「さぼってるんじゃないですか」と軽口を言われることもあります(笑)。ただ、現場に行けないと私もさみしくなるので、今後も可能な限りみんなと一緒に腕を振るうつもりでいます。
八重樫 ボクシングでも、若い子と並んで走って「もう息が上がったんですか」などと言われたら、発奮してもっと頑張ろうという気持ちが湧いてきます(笑)。そうすると若手も「なにくそ」と立ち向かってきてさらに成長してくれるんです。今村社長の教え方は私も共感することばかりでした。ぜひ、優秀な職人さんを続々と育てていただきたいですね。
今村 ありがとうございます。弊社が主に手がける公共作業では毎日が技術向上の修業であるのと、現場ごとに利益を出す気持ちが重要なんです。そういう現場をたくさんこなすと、他の公共以外の現場でも通用する技術を身に付けられます。また、造園業の元請けさん、マンションの住民の皆さんと上手にコミュニケーションを取り安心や満足感を持っていただく努力をします。そのように造園業で食べていくための技術をトータルで教えることが私の方針です。
八重樫 そうして、若手が自分を超えてくれると嬉しくなりますよね。
今村 本当におっしゃるとおりです。ですから弊社は、誰もがなるべくストレスなく楽しく仕事ができるよう耳を傾け、長く働ける環境を用意し、その中でスタッフに成長してもらっています。仕事が楽しいとなるのは教えられた技術を吸収し、それで利益を出せると実感できた時かなと。覚えた技術が自分の将来にもつながり認めてくれる仲間と絆ができる。そうやって一人前の職人に育ってくれたら嬉しいですね。もちろん弊社は意欲があれば独立も積極的に支援。造園に興味を持った若い人にはぜひ、どんどん仲間に加わってもらいたいですね!
「仕事を楽しむ」とは‥
従業員をはじめ、協力くださる職人さん、元請け会社さんなど、周囲の仲の良い仲間とみんなで楽しくレベルアップしていける仕事ができることが私にとっての楽しみですね。
今村あふる
いまむら造園株式会社
〒221-0864 神奈川県横浜市神奈川区菅田町712-6
事業内容 緑化管理/造園植栽工事/特殊伐採
設立 平成21年12月
従業員数 6名
主な取引先 横浜市/サカタのタネグリーンサービス株式会社/一造園土木株式会社/株式会社グリーンエクステリア